KATOエンジニヤリング開発日誌

「アウトプット無きエンジニアにインプットもチャンスも無い」の精神で書いています

プロジェクトリスクマネジメントを学ぶ - リスク特定 -

前回に引き続いて履修証明プログラムで学んだことを書いていきます。

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2回目は「リスク特定」についてまとめます。

リスク特定

リスク特定の必要性

プロジェクトマネージャーがチームと組織で要求される能力として「No one can see the future(未来は見えない)」と「Expect the Unexpected(予期せぬものを予期せよ)」ということがある。これは具体的には下記のようなことを行うことである。

  • リスクに番号を付け文章化し管理する
  • リスクの大きさを数字化で序列化する
  • 変化し続けるリスクを常に追跡する

「想定外」という言葉はリスクを予め特定しておくことが出来なかったということである。PMBOKでは予想できないものも予め予想しておかなければならないといっている。なぜならこれが利益の源泉だからである。

例として次のような事例があげられる。

関東にある生産工場で商品の生産を行っている。この工場は毎日部品が入庫されるが、大雪になったときにはトラックが動かず部品が入庫されないことが考えられる。部品が入らないと商品の生産ができず、工員などの人件費が無駄になってしまいおよそ1億円の損害が発生してしまう。しかし予めそういったことが考えられるとリスクの特定をしておき、予め予算を組んでおけば大雪になったときに慌てずにすむ。

そして、大雪が発生しなかったとき(関東では大雪になることは数年に1回程度しか発生しない)、予め組んでいた予算は利益となる。

リスク特定の目的

プロジェクトに対し、どのリスクがどの程度影響を与えるかを見定め、その特性を文書化するのがリスク特定の目的である。そしてリスク特定の作業はプロジェクトメンバーに当事者としての自覚と責任を持ってもらうため、全てのプロジェクト関係者(ステークホルダー)が参加することが望ましい。

リスク特定は一度特定して終わりではなく、プロジェクトライフサイクルを通し、新たなリスクが出現するごとに繰り返し行なっていく。

リスク特定をしたあとの記述はプロジェクト内では統一すべきである。これはプロジェクト内で他のリスクへの間接影響が比較可能になるからである。

このようにプロジェクト構想段階でリスクの特定を開始し、プロジェクト計画策定初期に完了する流れになる。

リスクリソース(リスク発生源)

リスクの発生源を先に特定し、その後リスクを特定する方法がある。下記に例を示す。

発生源 リスク例
政府 お役所仕事
財政 経済政策変更
プロジェクト スコープ変更
地域条件 地域の習慣
恒久設備 設備損傷
労働力 熟練者不足
暫定設備 リース金額変更
流通 アクセス条件
天災 洪水や地震

リスク特定のインプット・ツールと技法・アウトプット

リスク特定段階でのインプット・ツールと技法・アウトプットは下記のようになっている。

  • インプット
    • リスクマネジメント計画書
    • コストマネジメント計画書
    • スケジュールマネジメント計画書
    • 品質マネジメント計画書
    • 人的資源マネジメント計画書
    • スコープ・ベースライン
    • アクティビティ・コスト見積もり
    • アクティビティ・所要期間見積もり
    • ステークホルダー登録簿
    • プロジェクト文書
    • 調達文書
    • 組織体の環境要因
    • 組織のプロセス資産
  • ツールと技法
    • 文書レビュー
    • 情報収集技法
    • チェックリスト分析
    • 前提条件分析
    • 図解の技法
    • SWOT分析
  • アウトプット
    • リスク登録簿

インプット

リスクマネジメント計画書

RBS(リスク・ブレークダウン・ストラクチャ)のリスク区分、役割と責任、リスクマネジメントの予算とスケジュールへの組込み方法などが整理して記載されているもの。

コストマネジメント計画書

特有なコスト・マネジメント構造や内容にリスクが生じやすいので、リスク特定プロセスにはコストマネジメント計画書の内容理解が必要である。

スケジュールマネジメント計画書

特有なスケジュール・マネジメント構造や内容にリスクが生じやすいので、リスク特定にはスケジュールマネジメント計画書の理解が必要である。

品質マネジメント計画書

特有な品質や品質コストマネジメント構造の内容にリスクが生じやすいので、リスク特定には品質マネジメント計画書の理解が必要である。

人的資源マネジメント計画書

人的資源の定義・配置・離任等や組織図。

スコープベースライン

プロジェクト前提条件はスコープ記述書に記載されている。前提条件は重要リスク要因、前提条件ログ(リスト)として作成、各プロセス毎に評価する。

前提条件とは○年後までに技術が発展しているだろうといったものを指す。例としては自動運転技術に関する法整備が進むという前提で自動運転技術のプロジェクトを進めるといったものがある。

アクティビティ・コスト見積もり

アクティビティ・コスト見積もりを計画段階でレビューする。

アクティビティ・所要時間見積もり

アクティビティ・所要時間見積もりを計画段階でレビューする。

ステークホルダー登録簿

重要顧客など、ステークホルダーにインタビューを行い、協力依頼したりリスク特定プロセスへの参加を依頼したりする。

プロジェクト文書

プロジェクトで発行されたり、活用されている記載情報でリスク特定に役立つもの。

  • プロジェクト憲章
    • プロジェクトの大きなリスクなどが記載されている
  • プロジェクト・スケジュール
    • プロジェクト進捗状況が記載されている
  • スケジュールネットワーク
    • スケジュールのアクティビティ計画図
  • 課題ログ
    • 課題一覧表が記載されている
  • 品質チェックリスト
    • 品質の要注意項目が記載されている
  • リスクを特定する上で価値があると認められる他のプロジェクト情報
    • 前提条件ログなど

調達文書

プロジェクトの資源を外部調達する場合、調達文書はリスクとなる。

組織体の環境要因

リスク特定に影響を与える組織体の保有する記載情報としては以下のようなものがある。

  • 商用データベースを含む公開情報
    • 業界事業情報
  • 学術調査
    • 技術進展情報、新技術情報
  • 公開されているチェックリスト
  • ベンチマーキング
    • 評価判断指標
  • 業界調査
    • 資材価格情報・労働賃金情報
  • リスク態度
    • 社会の特定リスク対応傾向

組織のプロセス資産

リスクの特定に影響を与える組織のプロセス資産は次のようなものがある。

  • 過去の同様なプロジェクトに関する文章
  • 社内プロジェクト実績データを含むプロジェクトファイル
  • 組織やプロジェクトのプロセスのコントロールに関するマニュアルや規定
  • リスクリストや記述書のテンプレート
  • 過去の教訓

ツールと技法

情報収集技法

情報収集する技法として下記のような手法がある。

  • ブレーンストーミング
    • 集団で情報を出し合う、1つのアイデアが他のアイデアを引き出す
    • アイデアに対して否定的な態度をとらない
  • デルファイ法
    • 複数の専門家から別々に情報を得て編集する
    • 繰り返し行い、偏りを無くしていく
  • インタビュー
    • 特定の項目に対し、専門家やステークホルダーの意見を聞く
  • 根本原因分析
    • リスクの特定や対応計画作成にはリスク根本原因の把握が必要
    • e.g. 機械が壊れて基盤を交換したら直ったが、原因がわからないと再発する可能性がある

SWOT分析

プロジェクトの組織の強み・弱みを特定し、強みは好機に、弱みは脅威に特定する。

図解の技法

特性要因図や石川ダイアグラムで原因の識別をし、システムやプロセスのフローチャート・因果関係メカニズムを解明する。

アウトプット

リスク登録簿

リスク特定プロセスは文書化し、リスク登録簿を作成する。順番としては下記の通り。

  1. 選択したリスクのリストを作成
  2. 種類増加、削除、内容の詳細化などプロジェクト進展と共に充実させていく
  3. プロジェクト・リスク・マネージメントチームやプロジェクト・マネージメントチーム全体で活用する

リスク登録簿はリスクマネジメントにおいて中心となる文書である。識別したリスクの一覧表と実行可能な対応リストを記載しておく。