KATOエンジニヤリング開発日誌

「アウトプット無きエンジニアにインプットもチャンスも無い」の精神で書いています

プロジェクトリスクマネジメントを学ぶ - 定性的・定量的リスク分析 -

前回に引き続いて履修証明プログラムで学んだことを書いていきます。

www.kato-eng.info

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3回目は「定性的リスク分析」と「定量的リスク分析」についてまとめます。

定性的リスク分析

リスクの発生確率と影響度の査定と組み合わせをもとにリスクの優先順位付けを行うのが定性的リスク分析の目的である。優先順位付けを行うことで、優先順位の高いリスクに集中してパフォーマンスを向上させることができる。

定性的リスク分析を行う際のインプット・ツールと技法・アウトプットは下記の通り。

  • インプット
    • リスクマネジメント計画書
    • スコープ・ベースライン
    • リスク登録簿
    • 組織体の環境要因
    • 組織のプロセス資産
  • ツールと技法
    • リスク発生確率・影響度査定
    • 発生度確率・影響度マトリックス
    • リスク・データ品質査定
    • リスク区分化
    • リスク緊急度査定
    • 専門家の判断
  • アウトプット
    • プロジェクト文書更新版

インプット

リスクマネジメント計画書

定性的リスク分析に使用するリスクマネジメント計画書の項目には下記のようなことが記されている。

  • 役割と責任
  • スケジュール・アクティビティ
  • リスク区分
  • 発生確率と影響度の定義
  • 発生確率と影響度マトリックス
  • ステークホルダーのリスク許容度

リスクマネジメント計画書に上記のような項目の記載が無いときは新たに作成する。

スコープ・ベースライン

プロジェクト前提条件はスコープ記述書に記載されている。前提条件は重要リスク要因、前提条件ログ(リスト)として作成、各プロセス毎に評価する。

前提条件とは○年後までに技術が発展しているだろうといったものを指す。例としては自動運転技術に関する法整備が進むという前提で自動運転技術のプロジェクトを進めるといったものがある。

組織のプロセス資産

定性的リスク分析に使用する組織のプロセス資産としは以下のような項目がある。

  • 過去のプロジェクト実績中、完了した類似事例の確率・影響度尺度
  • 過去の類似プロジェクト実績の分析結果と実際発生リスクとの対比結果
  • リスク専門による、類似プロジェクトの内容調査結果
  • 業界団体や特定情報源からのリスクデータベース

ツールと技法

リスクの発生確率・影響度査定

洗い出した個々のリスクに対し発生確率と影響度の査定を行う。査定者はプロジェクトメンバー、リスク査定に精通した知識所有者、専門家などが行い、インタビューや会議にて個々のリスクを評価する。

このとき、評価基準はあくまでリスクマネジメント計画書の基準に従う。

基本的な計算式は

リスク発生確率 × 影響度

で算出できる。

発生確率・影響度マトリックス

発生確率と影響度から下記のようなマトリックス表を作成する。

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リスク区分化

プロジェクトは不確実なのでリスク発生源(リスク・ブレークダウン・ストラクチャー)毎に区分することにより、プロジェクト領域ごとに管理できる。

しかし、リスクを全部出しきることは不可能なので、予見不能リスクとして、全体の10%程度の枠をとっておくことが推奨されている。

リスク緊急度査定

リスク緊急度は優先順位を決める場合のもう1つの指標となる。定性的リスク分析では影響度の他に緊急度も重要度査定項目として加え、最終的な影響度にすることもある。

緊急リスクは緊急リスクリストを作成し、即対応実施できる仕組みが別途必要になってくる。

アウトプット

プロジェクト文書更新版

リスク登録簿更新版

定性的リスク分析のアウトプットはリスク登録簿更新版となる。

  • 要短期対応リスクのリスト
    • リスクは重要度に関わらず直ちに対応が必要なリスクと後日でよいリスクに分かれる。これらの一覧を頻繁に更新する
  • 追加の分析と対応を要するリスクのリスト
    • 2次リスクなど新たに発生してきたリスクや、重要度の大きな残存リスクなどはリスト化して確実に必要分析を行う
  • 低優先度リスクの監視リスト
    • 重要度の低いリストでも条件や環境変化に伴い重要化することがある。具体的な対応策は打たずとも監視は必要である
  • 定性的リスク分析結果の傾向
    • 対象プロジェクトで行った定性分析結果は他のプロジェクトに対しどのような傾向を持つかを文書化しておく
前提条件ログ更新版

前提条件ログも更新される。プロジェクトは立ち上げ時や契約時、多くの前提条件が組み込まれるが、前提条件はリスク化しやすい。また、各プロジェクトフェーズ毎に前提条件リスクの大きさは変化したり、前提条件そのものを変更する必要が生じることもある。

定量的リスク分析

定量的リスク分析は定性的リスク分析で優先順位の高い位置にランクされたリスクのプロジェクト目標に及ぼす影響を数量的分析を行うプロセスのことをいう。

リスクを測る尺度は下記のような計算式で算出できる。

リスク = 出来事の発生確率 × 影響度の大きさ

定量的リスク分析を行う際のインプット・ツールと技法・アウトプットは下記の通り。

  • インプット
    • リスクマネジメント計画書
    • コストマネジメント計画書
    • スケジュールマネジメント計画書
    • リスク登録簿
    • 組織体の環境要因
    • 組織のプロセス資産
  • ツールと技法
    • データの収集と表現技法
    • 定量的リスク分析とモデル化の技法
    • 専門家の判断
  • アウトプット
    • プロジェクト文書更新版

インプット

コストマネジメント計画書

コスト計画、コスト構成、コスト見積もり、予算化、各項目毎の基本計画との乖離、リスク予算確保など、予算金額の妥当性をチェックする。

スケジュールマネジメント計画書

スケジュール計画、スケジュールコントロールの形式などの基本計画が時間数と共に記載されているので、このデータを基に妥当性を分析する。

ツールと技法

データ収集・表現技法

  • インタビュー
    • 目標に対するリスクの発生確率と影響度を定量化するため経験と過去のデータを引き出す。楽観的(低い)、最も起こりやすい(中)、悲観的(高い)の3点で聞き取る
  • 確率分布
    • 正規分布や一様分布といった確率分布を用いる。
WBS要素 低い(L) 最頻値(M) 高い(H)
設計 4 6 10
ビルド 16 20 35
テスト 11 15 23
プロジェクト全体 31 41 68

※単位は百万円

インタビューの結果上記のような表が出来たとして、プロジェクト完了時コストがどれくらい掛かるかを計算する。

最頻値を重視して低い値や高い値を出した人の意見も取り入れると下記のような計算式が望ましい。

(L + 3M + H) / 5 
または
(L + 4M + H) / 6

定量的リスク分析とモデル化の技法

コストが予算内におさまるか、コスト見積もりをベースに確率分布を用いシミュレーションを行う。

スケジュールについては完了日予想などについては、スケジュールネットワーク図と所要期間見積もりをベースにシミュレーションを行う。

更に大型のプロジェクトでは繰り返し反復計算と乱数表を用いたモンテカルロ法などのシミュレーションモデル化技法が使用されることもある。

アウトプット

プロジェクト文書更新版

リスク登録簿に次の確率的解析を含める。

  • コスト見積もり
    • プロジェクト進展と共にEV分析(アーンドバリュー分析)などの結果より完成コストの見積もりとステークホルダーの許容度比較
  • スケジュール見積もり
    • 完成予定日と信頼性レベル、ステークホルダー許容度
  • コンティンジェンシー予備の定量化
    • 上記コスト、スケジュールが大きく未達成になったときに組織が許容可能なレベルまで持っていく予算額確保

プロジェクトの定量的分析結果のデータを過去のデータに照らし、リスクの大きさや傾向を文書化し、リスク登録簿へ記載することで新たな知見を組織に提供することができる。