KATOエンジニヤリング開発日誌

「アウトプット無きエンジニアにインプットもチャンスも無い」の精神で書いています

プロジェクトリスクマネジメントを学ぶ - リスク対応計画とコントロール -

プロジェクトリスクマネジメント第4回目は「リスク対応計画とコントロール」についてまとめます。

www.kato-eng.info

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リスク対応計画

想定されるリスクの中から優先度の高いものに対し、計画段階であらかじめ具体的な対応策を作成しておくことがプロジェクトを成功に導くために必要なこと。

リスク対応計画では下記のアクティビティを行う。

  • リスクの好機を高め、脅威を減少させる方策の策定
  • 1人の責任者をリスクオーナーとして任命
  • 優先順位に従い、対応予算・対応スケジュールをプロジェクトマネジメント計画書へ組み入れる

リスク対応策を予め決めておくことは、発生後に対応策を決めるよりコスト効率が高い。

リスク対応計画を行う際のインプット・ツールと技法・アウトプットは下記の通り。

  • インプット
    • リスクマネジメント計画書
    • リスク登録簿
  • ツールと技法
    • マイナスのリスクもしくは脅威に対する戦略
    • プラスノリスクもしくは好機に対する戦略
    • コンティンジェンシー対応戦略
    • 専門家の判断
  • アウトプット
    • プロジェクトマネジメント計画書 更新版
    • プロジェクト文書更新版

ツールと技法

マイナスのリスクもしくは脅威に対する戦略

分類すると下記4つの戦略が考えられる。

  • 回避(Avoid)
    • 計画変更で脅威を避ける
    • 目標変更などの手段を講ずる
  • 転嫁(Transfer)
    • 脅威を第3者に引き受けさせる
    • 保険や履行保証ボンドなどがある
  • 軽減(Mitigate)
    • 脅威の影響度を受容可能な水準に低減する
    • 予めプロトタイプテストを実施したりする
  • 受容(Acceptance)
    • 他に適当な対応策が無いときは受け入れる
    • 実際にリスクが起きたときのコストとリスク対応コストを比べ、割りに合わないときは敢えてリスクを受け入れることもある
    • 対応策を実施して受け入れる能動的受け入れと、何も手を打たない受動的な受け入れがある

リスク対策をすると、それが原因で新たなリスクが発生する恐れがある。このことを二次リスクという。

プラスのリスクもしくは好機に対する戦略

分類すると下記4つの戦略が考えられる。

  • 活用(Exploit)
    • 機会を確実に実現し、効果増加を狙う
    • 不確実性を最小化するために有能な要因を割り当てたり、材料が安い時にまとめて購入したりする
  • 共有(Share)
    • 好機を把握できる能力者の加入
    • 第3者へ実行権限の一部割譲やジョイントベンチャー形成などがある
  • 強化(Enhance)
    • 好機の効果を最大化する
    • 発生確率を上げたり、影響度を大きくする施策をとる
  • 受容(Accept)
    • 積極的な活動は無く、実現時に受け入れる

コンティンジェンシー対応戦略

好機の対応戦略

好機の受容は原則行うが、予め定められた条件が実現した時に行う現場での先取りは効果を減じる。具体的には納入者に優先度を上げさせるなどの計画変更を実行に移し、好機を実現させる。

また、材料が安いときに大量に購入して、高くなったときに売るなどのプロジェクトのスコープから乖離しての利益追求は行わない。

脅威の対応戦略

脅威が実現しそうな場合、条件が合致すれば予め作成してある代替案を実施する。中間マイルストーンが達成できないなどの対応策は予め決められたコンティンジェンシー発動事態に従い発動する。

アウトプット

プロジェクトマネジメント計画書 更新版

リスク対応計画をプロジェクトマネジメント計画書に反映させる。その他コストマネジメント計画書、品質マネジメント計画書、調達マネジメント計画書、人的資源マネジメント計画書などの計画書も更新する。

プロジェクト文書 更新版

リスク登録簿へリスクの優先順位と対応策を記入する。

リスクのコントロール

リスクコントロールプロセスの具体的なアクションは下記の通り。

  1. 前提条件の有効性の監視
  2. リスクの査定結果の変化状態、除去の可能性
  3. リスクマネジメント方針と手続きの遵守状況
  4. リスク再査定によるコンティンジェンシー予備の変更
  5. 代替戦略の選択、コンティンジェンシー計画の実行
  6. 是正措置の実施
  7. プロジェクトマネジメント計画書の修正
  8. リスクオーナーによるプロジェクトマネージャーへの定期的報告
  9. 教訓のデータベース化、テンプレート変更
  10. プロセス資産更新

リスクコントロールプロセスを行う際のインプット・ツールと技法・アウトプットは下記の通り。

  • インプット
    • プロジェクトマネジメント計画書
    • リスク登録簿
    • 作業パフォーマンスデータ
    • 作業パフォーマンス報告書
  • ツールと技法
    • リスク再査定
    • リスク監査
    • 差異・傾向分析
    • 技術的パフォーマンスの測定
    • 予備設定分析
    • 会議
  • アウトプット
    • 作業パフォーマンス情報
    • 変更要求
    • プロジェクトマネジメント計画書更新版
    • プロジェクト文書更新版
    • 組織のプロセス資産更新版

ツールと技法

リスク監査

リスクマネジメント機能の実効性を常に検証する必要がある。これは直接担当者と監査会議で実証される。

  • リスクマネジメントプロセスの有効性
    • 計画が計画書に沿って実行されているかの検証
  • 特定リスクの根本原因に対する対応策の有効性
    • リスク対応策(回避・転嫁・軽減)の有効性の検証
  • リスクオーナーの有効性
    • 常に担当が可能な状態であるかの検証

調査結果は文書化し、変更や是正が行わられる。

差異・傾向分析

実績パフォーマンスとベースラインとの違いをコスト・スケジュールから分析する。アーンドバリュー分析が有名。

  • アーンドバリュー分析
    • 時系列や同系プロジェクトで比較し、傾向を把握したりリスク識別を行い、原因や今後の差異の度合いを特定する

アーンドバリュー分析は脅威だけではなく、好機の認定にも使える。

予備設定分析

プロジェクトのコストとタイムのリスクにより生じる追加費用のことをManagement Reserve(予備費)と呼ばれる。予期できない内容不明のリスクと良きできている内容不明のリスクのコンティンジェンシー計画の費用として使用されるのがコンティンジェンシー予備である。この予備費は通常の予算超過には使用しない予備費である。

リスク残量などに一定の指標を決め、プラスマイナスを常に測定し、予備予算・予備時間が十分であるかを分析するのが予備設定分析である。プロジェクトの任意の時点で定期的にこの分析を繰り返し行うことで利益の確保や拡大が望める。

技術的パフォーマンスの測定

プロジェクトの技術的達成成果を技術的項目達成スケジュールと比較し、マイルストーンからの逸脱度合いをチェックする。

アウトプット

作業パフォーマンス情報

リスクのコントロールが行われると、それに伴い作業が変更される。プロジェクトの意思決定伝達と変更をサポートする仕組みを作業パフォーマンス情報としてプロジェクト作業監視・コントロールプロセスに伝える。

変更要求

プロジェクト計画の全ての変更は「変更要求」で行われる。プロジェクトはプロジェクトマネージャーですら勝手に変更してはいけない。

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リスクマネジメント計画に沿った変更は「変更要求」を行い、文書に残す。リスクマネジメント計画に沿っていない変更(突発的な事象)は是正措置を行い、対応後に変更依頼を提出する。

変更には下記のような事象が起こりえる。

スコープ変更

スコープ変更はリスクが大きいので注意が必要。プロジェクトマネージャーより上の立場の人間が無理を言ってくる場合にはプロジェクト中止やプロジェクトマネージャーを降りることが必要になる場合もある。

予防措置と是正措置
  • 予防措置
    • 発生が予測されるネガティブリスクを予め決められた対応措置を実施することで未然に防止
    • 予め兆候が決められていれば、リスク対応が早くプロジェクト全体を一貫した対応ができる
  • 是正措置
    • リスク計画に無いリスクが発生し、変更が行われること
    • 対応後、是正措置として変更依頼を提出する

ネガティブリスクは被害最小化の方向で速やかに実施することが重要。

迂回策

リスク対応計画に無く、コンティンジェンシー計画の用意も無い場合、プロジェクトがリスクを避ける方策を講ずること。

迂回策はリスクマネジメント計画の変更を意味するので、リスク対応計画とリスクデータベースを更新する。

アウトプット

組織のプロセス資産 更新版

リスクマネジメントの各プロセスにより得られた知見と教訓を含む情報を取り込む。これが会社の財産になる。